石畳はパシャリと歌った


その、雨に歌いし人は・・・


ここ3日ほど雨が降っていた.

朝夕振り続けてなお、未だ止む気は無いように見える.

今日もゴンドラの練習が出来ない.

アリスの気分は日を追うように下降していた.

無論先輩たちとの勉強会だって必要だと思うし楽しいに違いはないのだ.

そう分かっていても溜め息を止めることは出来なかった.

傘を差すと俯いて歩いてしまうのはなぜだろう.

水溜りを避けるとチラッと不貞腐れた自分の顔が見えた.

あまりに情けなくて、もう一度溜め息を吐こうとした時、

どこからか微かに聞こえた声にアリスは顔を上げた.

まるで空気を澄ませていくような声.

傘の先から落ちた雨粒が前髪を少し濡らす.

アリスは気にせずに会社の建物へ入っていった.

濡れた前髪が気にならなかったのは、きっと聞き間違えるはずのない歌声のせいだ.

「アテナ先輩、ただいまです.」

窓辺に立つ声の主は振り向いて笑った.

そしてアリスに手招きをした.

アテナは同室の先輩だが、アリスは未だに彼女が何を考えているか分からないときがある.

今も、外は雨だというのに窓を堂々と開けているし、

「ただいま」と言ったのに「おかえり」と返してくれることもしない.

「なんなんですか.」

招かれた通り窓によって、下に見える道へと視線を落とす.

「雨の日にしか見れないものもあるのよ.」

目が覚めるような気がした.

急にパタパタ雨除けを跳ねる雫の音が聞こえだす.

でたらめに音階を踊る音はみょうに心地よい.

赤や青、様々な色が道を行き交っていく光景に眩しい錯覚を覚える.

雨の日はこんなにも明るかっただろうか.

「アリスちゃんの傘は綺麗な空色だったね.」

すぐに分かったのだと楽しそうに言われてしまえば、気恥ずかしくとも返す言葉が無くて・・・.

実は買い換えようと思っていた傘.

きっともう買い換えに行かないだろう.

嫌いなものがまたひとつ無くなってしまったと、アリスは違う溜め息を吐いた.




「アテナ先輩、さっきの歌もう一度歌ってください.」




初ARIAです
自分の文才の無さに絶望したー!(今更
08.05.22